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超然永遠

社の鉄の扉の

暑く、仕事のやる気も頬をつたって流れ落ちた。  美奈子は会社のビルのエレベータを降りた。足元を気にしながら、自前まで廊下を歩く。床は蟻が這うように無数の水滴で濡れており、滑りそうだった。  扉を開ける。オヤジの顔が見えた。そういう陽気で、オヤジの顔を直視するのは絵的に辛く全身が震えた。思わず、身を引きつらせながら目を瞑る。オールバックの油が熱を包み込むようで、むさ苦しかった。 (ふ~う、オヤジは無視して化粧室へ直行かしら。ストッキングが濡れたままだと気持ち悪いし。お化粧も直さないとね。その後は、ちょっとコーヒーでも飲んで休憩。オヤジの所へはその次くらいかな)  忍び足で壁づたいを進んだ美奈子は、奥の化粧室へ消えようとした。 「美奈子! 早くこちらへ来なさい」  オヤジの大きな声が部屋中に響き渡り、社員の視線が美奈子の背中に集まった。  美奈子は足がぴたっと止まり、背筋が伸びた。震えるような顔をしながら、オヤジの声の方へ振り向いた。 「あの、お化粧を直してからでもいいですか?」 「そんなもんは、直さなくても良い!」  額を光らせながら、オヤジは美奈子を見つめている。 「俺は気にせんし、うちはクラブじゃないからな」 「お化粧だけではないのです。色々とあるので・・・・・・」  顔を赤らめ、美奈子は小さな声で下を向いた。  オヤジは大きな声で少しからかうような口調で喋り出した。 「何だ、小便か。小学生じゃあるまいし、仕事の報告をしてからにしなさい。それくらい、我慢できるだろう」 「それって、セクハラだと思います!」  大きな声で顔を上げた美奈子は、胸をつんと出した。  オヤジは椅子の背を前後に揺すりながら大きな笑いを始めた。 「はっはあ、何を言うか。お前の尻を触った訳ではない。それに、うちは大企業じゃない。一にも二にも仕事優先! そうでないと、小さな会社はつぶれるからな。会社が倒産したらセクハラもクソもないだろう。ゴチャゴチャと、屁理屈をこねていないで早く仕事の報告をしなさい。それとも、査定を下げてほしいのか!
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